「高校には入れそうだから勉強しなくていい」その安心が、3年後の選択肢を狭めるかもしれません

「この高校、倍率低いから大丈夫ですよね?」

「定員割れしているなら、そんなに勉強しなくても入れますよね?」

長く受験指導をしていると、こうした言葉を聞くことがあります。

そして私は、この「大丈夫」という言葉が少し怖いのです。

確かに、高校に合格することだけを考えれば、大丈夫なのかもしれません。

でも、その子の人生は高校入学で終わりではありません。

むしろ問題は、その3年後です。

高校3年生になったとき、

「行きたい大学ができた」

「この仕事に就きたい」

「この学部で勉強してみたい」

そう思ったときに、

「学力が足りないから選べない」

となってしまう。

私は、高校受験の現場で一番怖いのはここだと思っています。

「高校に入れる」と「勉強しなくていい」は全く違います

少子化などの影響もあり、高校入試を取り巻く環境は地域によって大きく変化しています。

倍率が1倍を下回る高校もあります。

その数字を見れば、

「ここなら入れそう」

と思うのは当然です。

志望校を決めるうえで倍率を見ること自体は、何も悪いことではありません。

ただし、

倍率が低い=勉強しなくてもいい

ではありません。

ここを勘違いしてほしくないのです。

高校入試の倍率が低くても、高校で習う数学が簡単になるわけではありません。

高校英語が簡単になるわけでもありません。

そして大学進学を考えるなら、その先には大学入試があります。

高校の「入口」が広くなったことと、その先で必要になる学力は別の話なのです。

中学校の「分からない」は高校で消えてくれません

たとえば、中学校の数学。

方程式が苦手。

関数がよく分からない。

図形になると手が止まる。

その状態でも、学校によっては高校に合格できるかもしれません。

では高校へ入ったら、その苦手はどうなるでしょうか。

残念ながら、

高校に入学した瞬間にリセットされるわけではありません。

むしろ、中学校で習った内容を「分かっているもの」として高校の授業が進んでいきます。

英語も同じです。

be動詞と一般動詞。

時制。

不定詞。

比較。

現在完了。

中学校で習った英文法が曖昧なまま高校へ進めば、高校英語で苦しくなる可能性があります。

つまり、

高校に合格したことで問題が解決したのではなく、分からないものを持ったまま次のステージへ進んだだけ

というケースもあるのです。

本当に怖いのは、高校3年生になってからです

高校1年生のときは、まだそれほど危機感がない。

高校2年生になっても、

「大学受験はまだ先」

と思っている。

そして高校3年生。

周りが志望大学を決め始めます。

自分も大学を調べてみる。

そこで初めて、

「ここに行ってみたい」

という大学が見つかる。

ところが模試を受けてみると、全然届かない。

英単語が足りない。

長文が読めない。

数学の基礎が抜けている。

場合によっては、中学校の内容まで戻らなければならない。

そして、

「もっと早く勉強しておけばよかった」

となります。

私は、この言葉をできるだけ聞きたくありません。

15歳で将来が決まっていないのは当たり前です

中学生に、

「将来何になりたい?」

と聞いても、

「分からない」

と答える子はたくさんいます。

私は、それでいいと思っています。

15歳です。

将来やりたい仕事が決まっていなくても普通です。

行きたい大学が決まっていなくても普通です。

でも、だからこそ勉強してほしいのです。

今は大学へ行くつもりがなくても、高校2年生になって行きたい大学が見つかるかもしれない。

高校3年生になって、

「この仕事をしたい」

と思うかもしれない。

そのときに、

「中学生のとき勉強していなかったから無理」

となってほしくありません。

将来の夢が決まっているから勉強する。

それだけではありません。

将来の夢がまだ決まっていないからこそ、選択肢を残すために勉強する。

そんな考え方があってもいいと思います。

「行ける学校」と「行きたい学校を選べる」は違います

高校受験でも大学受験でも、

「どこなら入れますか?」

という相談はたくさんあります。

もちろん、それを考えることも必要です。

でも私はできれば、

「どこなら入れる?」

だけではなく、

「どこに行きたい?」

を考えられる子になってほしいと思っています。

大学でもいい。

専門学校でもいい。

就職でもいい。

地元に残ってもいい。

県外へ出てもいい。

選ぶ道は一つではありません。

そして大学進学が偉いわけでもありません。

大切なのは、

自分がやりたいことを見つけたときに、自分で選べること。

学力は、その選択肢を残すための一つの力です。

「高校に入れるから大丈夫」の大丈夫は、どこまででしょうか

保護者の方にも、ぜひ一度考えてほしいことがあります。

子どもが、

「この高校、倍率低いから大丈夫」

と言ったとします。

そのときの「大丈夫」とは何でしょうか。

高校に合格できそうだから大丈夫。

それは確かにあるかもしれません。

でも、

高校の授業についていけるから大丈夫。

大学受験も大丈夫。

将来の進路も大丈夫。

という意味ではありません。

だから、

「倍率が低いからもっと勉強しなさい!」

と叱る必要はないと思います。

それよりも、

「高校には入れるかもしれないね。でも高校に入ったあと、どんな自分になりたい?」

そんな会話をしてみてほしいのです。

「勉強しなさい」より伝えてほしい言葉

もし、お子さんが

「どうせ高校には入れるから」

と言ったら、

こんなふうに伝えてみてください。

「高校に入るためだけに勉強しているんじゃないよ」

そして、

「3年後にやりたいことが見つかったとき、選べるようにしておくためだよ」

と。

中学生に10年後の人生を考えろと言っても難しいと思います。

でも、

「未来の自分が困らないようにする」

なら、少し伝わるかもしれません。

高校合格をゴールにしないでほしい

高校受験では、どうしても

「合格」

が大きな目標になります。

もちろん、それでいいのです。

一生懸命勉強して第一志望に合格した経験は、大きな自信にもなります。

でも、合格発表の日で人生が終わるわけではありません。

その数週間後には高校生活が始まります。

そして3年後には、また次の進路選択がやってきます。

だから私は、中学生にこう伝えています。

高校受験はゴールではない。

高校合格は、

次の人生へ進むためのスタート地点です。

倍率が低くても。

定員に余裕があっても。

高校に入れそうでも。

勉強する価値まで下がるわけではありません。

今、将来やりたいことが決まっていなくても大丈夫です。

だからこそ、

未来の自分が「これをやりたい」と思ったときに、その道を選べる自分でいてほしい。

高校受験の勉強には、そんな意味もあるのではないでしょうか。

私はこれまで、多くの生徒や保護者の学習相談に関わってきました。

そこで感じるのは、

「もっと早く相談していればよかった」

という悩みがとても多いことです。

成績が悪くなってからでなくても構いません。

受験学年になってからでなくても構いません。

「このままでいいのかな?」

そう感じたときが、親子で勉強や進路について考える一つのタイミングです。

このブログではこれからも、高校受験だけをゴールにせず、その先の高校生活・大学受験・将来まで考えた学習について、塾講師の立場から分かりやすく発信していきます。

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