授業料だけに頼らない塾の収益モデル、固定費と変動費とは?

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固定費と変動費の最適化――利益率を高める塾経営の実践法

前回までの記事で、資金繰りの安定化や収益モデルの多角化についてお話ししました。

しかし、収益を増やすだけでは不十分です。

経営の土台を強くするには、支出の最適化が欠かせません。

特に学習塾経営では、固定費と変動費のコントロールが利益率を大きく左右します。

今回は、この二つをどう見直し、最適化していくかについてお伝えします。

1. 固定費と変動費の違いを理解する

まずは基本から。

  • 固定費:生徒数が増減しても毎月ほぼ変わらない費用
     例)家賃、人件費(固定給)、通信費、保険料、広告費の一部
  • 変動費:生徒数や授業回数によって変わる費用
     例)教材費、光熱費、講師の時給、テスト代

この二つの性質を理解するだけで、削減や見直しの優先順位が見えてきます。

2. 固定費削減は“長期的効果”が大きい

固定費は毎月必ずかかるため、削減できれば年間で大きな差になります。

例えば家賃を月2万円下げると、年間で24万円の利益増。

これは新入生1〜2人分の年間授業料に相当します。

固定費見直しの実例

  1. 家賃交渉
     - 長期間空き物件だった場合、交渉で5〜10%下げられることもあります。
     - 更新時に再交渉するだけでも効果大。
  2. 通信費のプラン見直し
     - オンライン授業の通信量を把握し、不要な高速回線契約を外す。
  3. 広告費の配分変更
     - 年間契約の広告を効果測定し、反応が低い媒体は中止。
     - 高反応のSNS広告や口コミ施策に集中投資。

3. 変動費は“効率化”で削減

変動費は生徒数に比例して増えるため、削りすぎるとサービス低下に直結します。

削減ではなく効率化を目指します。

変動費効率化の実例

  1. 教材費の一括仕入れ
     - 学年初めにまとめて仕入れることで、1冊あたり5〜15%安くなるケースあり。
  2. プリント印刷の最適化
     - 無駄な配布資料を削減し、必要なものだけ印刷。
     - データ配信できるものはオンライン化。
  3. 講師シフトの柔軟化
     - 授業数に応じて講師のシフトを調整。
     - 繁忙期と閑散期で稼働時間を変える。

4. 削減と同時に“投資すべき費用”を見極める

固定費・変動費を見直すときに陥りやすいのが、「削減=正解」という思い込みです。

塾経営では、削るべき費用と、伸ばすべき投資費用があります。

削ってはいけない費用の例

  • 教育の質に直結する教材費
  • 保護者・生徒との信頼を築くための連絡・面談費用
  • ICTや環境改善などの学習環境投資

これらを削ると短期的には利益が増えても、長期的に生徒数や満足度が低下します。

5. 最適化の流れ(私が実際にやっている方法)

私は毎年3月に、以下の手順で費用を見直しています。

  1. 年間支出の洗い出し(固定費・変動費別)
  2. 削減候補をピックアップ(削減率と影響度をメモ)
  3. 投資候補をピックアップ(効果と回収期間を試算)
  4. 翌年度予算案を作成
  5. 半年後に実績と比較して再調整

このプロセスを毎年繰り返すことで、無駄を減らしつつ必要な投資を続けられます。

6. 数字で見る最適化の効果(実例)

ある年、コンサル業務をお願いされている塾で、以下の見直しを行いました。

項目見直し前見直し後年間差額
家賃120,000円110,000円+120,000円
広告費年間600,000円年間450,000円+150,000円
教材費1冊800円まとめ買いで720円+48,000円
合計改善額+318,000円

これだけで、ほぼ生徒3〜4人分の年間授業料と同じ利益が生まれました。

7. 柱と枝における最適化の意味

  • 柱を守るために:経営が安定し、理念に沿った判断ができる
  • 枝を伸ばすために:新しいサービスや設備投資に資金を回せる

無駄を省き、必要な場所に投資することこそ、柱と枝の両立を支える資金の循環です。

8. おわりに

固定費と変動費の最適化は、一度やれば終わりではありません。

毎年見直し、改善を積み重ねることで、利益率は確実に上がります。

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