授業料だけに頼らない学習塾の収益モデルとは?枝を広げ、柱を守る経営戦略

「柱と枝」の考え方も織り込みながら、現場で実践しやすいアイデアを紹介します。

以前お話しした「資金繰りの安定化」には、固定費を抑えるだけでなく、収入の柱を複数持つことも重要です。

特に地方の個人塾では、生徒数が少し減るだけで経営に直結するため、授業料収入だけに依存するのはリスクが高いです。

今回は、私がこれまでに試してきた、または他塾で成功している「多角化収益モデル」をご紹介します。

目次

1. 授業料だけに頼らない理由

授業料収入は塾の中心ですが、次のような弱点があります。

  • 季節変動が大きい(新年度・長期休暇の前後がピーク)
  • 定員の限界がある(座席数・時間帯に上限がある)
  • 退塾による影響が即ダメージになる

一方、複数の収益源があれば、授業料が減っても他の収入で補えます。

これにより、理念(柱)を崩さずに経営を続けられるのです。

2. 枝を広げる=付加価値を生む

多角化と聞くと、大掛かりな新規事業を想像するかもしれません。

しかし実際は、既存の強みを活かして枝を伸ばす方法が現実的です。

塾の強みは「教育資源」と「学習ノウハウ」。

これを軸に、次のような収益モデルを組み合わせられます。

3. 実例① 季節講習・短期集中講座の強化

講習は収益の柱ですが、既存の内容を拡張するだけでも安定化につながります。

例えば、

  • 中学入学前の「英数先取り講座」
  • 高校入試直前の「理社一問一答マラソン」
  • 定期テスト直前の「5時間耐久勉強会」

これらは広告費も少なく済み、在籍生への提案で高い参加率が見込めます。

4. 実例② 家庭学習サポートの有料化

オンラインでの質問対応や学習計画作成を「月額サービス」として提供します。

たとえば、

  • LINEでの学習計画チェック(月額1,000〜3,000円)
  • オンライン質問受付(回数制またはサブスク)

これにより、通塾日数を増やせない生徒からも追加収益が得られます。

5. 実例③ 教材・学習ツール販売

塾で使っている教材やおすすめの参考書を販売する方法です。

小規模塾でも、仕入れ値と販売価格の差で収益が生まれます。

例:

  • 塾オリジナルの単語帳や計算プリント
  • ICT学習アプリの塾経由契約

特にICTツールは、ライセンス契約で継続的な収入になるケースもあります。

6. 実例④ 学習イベント・検定の主催

  • 漢字検定・英語検定・数学検定の準会場
  • 模試の開催
  • 読書感想文コンクールや作文教室

検定料の一部や模試の主催料が収入になりますし、イベント自体が集客にもつながります。

7. 実例⑤ 教室の時間貸し・場所活用

授業がない時間帯に教室を貸し出す方法です。

  • 午前中はカルチャー教室や資格講座に利用
  • 日中は自習室として有料開放

地方では特に、駅前や住宅地の空き時間を活用することで安定収入が生まれます。

8. 実例⑥ 提携ビジネス

地域の書店やスポーツクラブ、通信教育サービスと提携し、紹介料を得る方法です。

生徒や保護者にとっても便利なサービスであれば、自然な形で案内できます。

9. 多角化で注意すべき3つのこと

  1. 理念から外れないこと
     短期的に稼げても、塾の信頼を損なうサービスは避ける。
  2. 既存の業務を圧迫しないこと
     新しい収益源で本業が疎かになっては本末転倒。
  3. 小さく試すこと
     まずは少額・短期間で試し、効果があれば拡大する。

10. 私の塾での成功例と失敗例

成功例:

  • オンライン学習サポート(月額制)
     → 家庭学習習慣が弱い生徒が継続参加、追加収益化
    失敗例:
  • 土日イベントを詰め込みすぎ、スタッフの負担増
     → 本業の授業準備に影響、早期終了

この経験から、「続けられる規模で始める」ことの大切さを学びました。

11. 柱を守りながら枝を広げるために

多角化は、枝を大きく伸ばす行為です。

しかし柱(理念)を支える方向で伸ばさなければ、形だけが大きくなり、倒れてしまいます。

例えば「生徒の自立学習を育てる」という理念があれば、

→ 家庭学習サポートや教材販売は理念と一致する

→ 無関係な物販や過剰な副業は理念とズレる

12. おわりに

授業料だけに頼らない収益モデルは、資金繰りを安定させ、理念を守りながら枝を自由に伸ばすための大切な戦略です。

目次